失敗しない
屋外専用木製手摺ガイドブック
 
 
 

棒屋 

 

 

はじめに
 
「失敗しない屋外専用木製手摺ガイドブック」は、木製手摺を土木でも使用したいという要望に応えて作られたもので、2時間程度の講習会のテキスト用に作成されたものをダイジェスト版として再編集したものです。
土木という業種は、文字通り、「土」に「木」と書きますが、現在のわが国では、高度成長期以降、土木の「木」の技術が欠落してしまいました。コンクリートと鉄と置き換えられたと言った方が、良いでしょう。ただ、最近は、地球温暖化や環境問題、地産地消等の観点から木材が見直されています。
心ある多くの担当者は、「屋外専用木製手摺を使用したい」と棒屋の私たちに話してくれます。しかし、屋外専用木製手摺を使用するに当たって指針となるテキストや解説本の類が非常に少ないことに気づきました。また、土木をベースにした資料がなく、ほとんどの資料が建築等の基準を流用しているため、誤解や間違いもありました。これらを整理し正しい知識としてコンパクトにまとめたものが、この屋外専用木製手摺ガイドブックとなります。膨大な資料をコンパクトにしたため、説明不足等の感は、否めませんが、この屋外専用木製手摺ガイドブックで「屋外専用木製手摺が土木で使えるんだ」という事実を理解していただければ、幸いです。
この『屋外専用木製手摺ガイドブックを』発刊するにあたりまして関係者の皆様に感謝申し上げます。
 
屋外専用木製手摺販売店 棒屋
店主 海野洋光
 
 
 
 
1.なぜ日本は、土木で屋外専用木製手摺を使わなければならないのか?
(外専用木製手摺を使用するための理論武装)
 
環境問題対策の面  ―プリウスが増えても???
 1997年の京都議定書でCO2の放出量を2010年までに1990年の6%を削減することが目標値となっています。その削減分には、森林が吸収してくれるとみなして最大3.8%が割り当てられるようになっています。森林のCO2の吸収量を3.8%確保するためには、国産材の伐採量を2000万立方から2500立方に引き上げなければ6%どころか3.8%も達成できません。「あれ??木を切らないとCO2の吸収量が賄えないなんて聞いていないぞ!」と思われるかもしれませんが、CO2を吸収する森林は、新しく植林された人工林を対象としていますから今までよりも500万立方多く伐って新しい植林をしなければならないのです。
吸収源として森林に3.8%を期待されていますが、国産材自体の利用がさまざまな分野で広がることが大切なのです。特に欧州では、土木分野の木材の使用率が高いウェイトを占めています。「エクステリアウッド」と呼ばれ、「木橋」「浮き桟橋」「護岸材」「ガードレール」「遮音壁」などです。
 
景観対策の面  ―――カタログ土木といわれて―――
 2004年に景観三法が成立され土木の分野にも総合的なデザイン力が求められるようになりました。合理的で経済性だけを追求した構造物・全国共通の画一的な製品を使用するだけでは、周辺景観にマッチした総合的な土木デザインは生まれません。地元の経済効果を計りつつ価格を抑え、素材を吟味したデザインであればあるほど評価も高くなっています。周辺景観との調和を大切にする手段として地元に近い天然資源を有効に使用した製品や構造物の使用は、ひとつの手段です。この点、木材は日本中どこにでも存在しますので現場で得られたノウハウが、次の事業にも生かされる可能性が高い素材ともいえます。
 
周辺住民に優しい公共物の面  ―コンクリートはいらない―
 不要な公共工事、税金の無駄使い、ハコモノ行政と言われて公共工事が全て悪のような扱いを受けていますが、何が間違いなのでしょうか?時代をちょっと遡りますが、昔、年度末にやたら工事が増えるとか、新しく舗装した道路を何度も掘り返すとか世相をちくりと批判した漫談がありました。多くの土木関係者は、軽く聞き流していたかもしれませんが、一般大衆の脳裏にじわじわと公共工事に対する悪いイメージが構築されていったように思えます。ひとつの事柄をさも全てのように面白おかしく話す漫談に対処しろという訳ではありませんが、公共工事に携わる者として公共事業の計画から工事期間中、完成後と地域住民や施設を利用者とのコミュニケーションを今までどのようにとっていたでしょうか?有用な公共工事でも関わりが少なければ少ないほど無関心が蔓延り、国民や住民に不要論を叫ばれたらひとたまりもありません。
公共工事のコミュニケーションアイテムとしても木材は、有効です。特に「杉」は、日本人のDNAを刺激するのか、公園づくりのワークショップでもベンチや藤棚に使いたいナンバーワンの素材です。それもそのはず、学名 Cryptomeria japonica D.Donクリプトメリア ジャポニカ)の意味は「隠れた日本の財産」だそうです。そのほかにも地元の住民に屋外専用木製手摺を取り付けてもらったり、毎年メンテナンスイベントをおこなったり今までにない住民と公共工事をつなぐ素材でもあります
 
2.この工事に屋外専用木製手摺が使えるか!!
(屋外専用木製手摺の判断基準)
 
「木材は良いんだから使ってよ!」 ―ちょっと待った!!―
 木材を使うことによって地球環境や地域の景観、住民の意識も良い方向に導き出せる素材であることは、理解していただけたと思います。しかし、実際の工事や事業に木材を利用できるのか明確な基準がないと判断が下せないと担当に言われたことがあります。よく言う「実績」という話です。実例が増えても果たしてその結果がどうなっているのか担当者としてみれば心配でしょう。当然です。 
棒屋が知っているだけでも何も考えないで木材を屋外で使ってとんでもないことになった事例が山ほどあります。たぶんさまざまな業者が担当者の下に製品や木材を売込みがくると思います。棒屋の屋外専用木製手摺は、別として屋外の木製製品にもさまざまな種類があります。外国産木材のハードウッド、化学処理された注入木材、合成木材、木材保護塗料を塗った木材、新技術でできた木材などなど。そこで、この工事に本当に木材が使えるかという疑問に「どのように対処すれば良いのか」「何を信じれば良いか」ちょっとした私なりのルール(コツ)の紹介をしましょう。
海外の使用例を挙げて「大丈夫なんです」という方がいます。前に前述した欧州(外国)の木材の屋外の使用例は、日本では当てはまりません。気候が違いすぎるんです。日本で屋外施設に木材があまり使用されていない理由に日本の高温多湿の気候があります。シロアリや腐朽菌が繁殖しやすい点が、外国とは比べられないほど日本は条件が悪いのです。特に品質管理を厳密におこなう土木用資材としての屋外の木製品は、基本は、最低でも10年の実績 は必要ですね。ですから、製品カタログの実例集に日本での施工年度を明記しているものを選んでください。施工年度が記載されていないと確認ができません。自分が納得したものを選ぶこの当たり前の行為が出来るカタログを要求すべきです。最新技術には、飛びつく必要はありません。自分の担当した事業がメーカーの実験台になるのが落ちです。
化学処理された注入材で「クレオソート」と「CCA」と書かれた処理剤は、絶対に使用しない『止めることのできない重大な結果が流出するパイプライン』(砒素・6価クロム・農薬フェノールなど)と呼ばれ、木材の耐久性向上のために安全性を無視する結果を招いています。公共工事だけでなく、自分の工事で環境を破壊する行為だけはできるだけ避けたいものです。出来る限り毒性のないもの(無毒)、低いものを選ぶことは重要だと思います。ちなみにホームセンターで以前販売されていた鉄道の使用済み枕木は、現在は危険なため販売禁止です。でください。確かに防腐効果は、絶大ですし、実績もあります。しかし、これらの薬剤は
塗装メーカーには悪いのですが、木材保護塗料を塗っただけの木材が屋外しかも露天で何年も同じ性能を保てることはありません。現在あるほぼ全ての木材保護塗料は万能ではないということ知っておいてください。木材保護塗料は、木材表面の紫外線劣化を防ぐためのもと割り切った使い方が必要です。本当は、ペンキ(オイルペイント)の違いも詳しくしなければならないのですが、ここでは、割愛します。
 最近は、性能設計が流行っています。木材でも性能設計を求めてみたらどうでしょう。売り込みにきた業者に「保証」とその内容を確認するのも選定の基準にしても良いと思います。担当者としては製品の性能をなんらかの担保で補いたいものです。業者の明確な性能の(保証)担保があれば、ライフサイクルコストやメンテナンス設計なども計算でき、性能設計に基づいた工事が可能になります。10年保証』が、近頃の主流になっています。よく、○○の認定とか××基準をクリアーしている製品だから大丈夫という業者がいますが、それは、あくまでも決められた規格や試験に合格したもので想定した経過年の性能を保証するまでにはいたっていないものが多いのが現状です。
 毒性のあるものないものと言うところにも絡みますが、化学処理された注入木材を現場施工でも同等の性能を使用できることは、重要なポイントになります。木材は、簡単に加工ができます。処理済の木材の現場加工は、腐食の根源になります。せったく、化学処理によって防腐処理が行われた木材を現場で切断・開穴しなければならない状況でも対応できる製品がであることも確認する必要があります。この質問をしたとき、「切断面は木材保護塗料を塗布すれば良いですよ」と言った業者は、完全に×ですね。
 
 
このガイドブックは、国産材(特に杉材)を屋外で使用していただくことを前提に進めています。もし、屋外で外国産材や合成木材を使うためにこのガイドブックを利用しようとするならば、どうぞ、このガイドブックは、読まないでください。日本の基幹産業である林業・木材業を守り、地球の環境を論じることの大切さを保身に走る技術者に使ってほしくはありません。
 
 
 
3.屋外専用木製手摺を使うための設計チェックポイント
(設計段階の掟)
 
物事の弊害や事故は、基本を忘れ、基本を無視したときに起きるものです。木材を使うに当たって設計ではどのようなことに気をつけなければならないのでしょうか。
 
設計の基本は、設計対象とする構造物の設計共用期間を定め、設定した期間において安全性、使用性、修復性の基本要求性能を確保することとする。   =国土交通省=
 
[掟1] 共用期間の設定と木材
国土交通省が定義する「土木・建築における設計の基本」は、共用期間の設定と安全性、使用性、修復性の基本要求性能確保となっています。はじめに、木材を屋外で使用するためには、共用期間を設定しなければなりません。木材を使用するに当たって基準となる共用期間をメーカーが提唱する保証期間と設定しましょう。
あるメーカーが「木材の保証期間を10年」としましたので共用期間を10年と設定しましょう。しかし、共用期間が短すぎると思いませんか?木材が他の素材と違うところは、修復性の高さにあります。引き合いに出すのが、大変おこがましいのですが、世界遺産に登録された「奈良の法隆寺」は、建立されてから約1300年間経った現在でも木造建築物の基本性能は、維持されたままです。この秘密は、法隆寺が常にメンテナンスを怠らなかったからなのです。つまり、設計の段階で共用期間を設定すると同時に修復性(メンテナンス)をきちんと設計のなかで定義するだけで驚異的な共用期間が実現する訳です。私は、正しいメンテナンスと正しい施工をおこなうことによって最低3から5倍の共用期間が得られると考えています。
 
[掟2] 木材での安全性の確保  耐久性と強度
 今世界中で安全性が叫ばれています。安全性の確保とは、構造物内外の人命の安全性のことです。例を挙げればきりがないのですが、最近まで奨励されていた薬品が突然、使用禁止なったり、含有量の低減を定められたりしています。ユーザーの目が厳しいことは、当然ですが、メーカーや製造会社も死活問題にもなりかねません。
土木で木材を資材として使用するにあたっての特徴に耐久性能があります。私たちは、「木材の保存」と呼んでいます。この考え方は、腐る木材を防ぐ「防腐」です。木材の耐久性を高める方法の研究は、古今東西おこなわれてきています。防腐は、人類の化学の基礎のようなものです。一般には、腐食菌や害虫を殺菌する手法が主流です。当然、殺菌剤である毒素系が中心に発達してきました。しかし、時代がそれを許さなくなってきている流れをつかまなければなりません。毒性を極力抑えたものもしくは、無毒、無公害なものを求めてください。
普通、土木・建築での安全性の確保の中心は、構造物の強度でしょう。想定した作用に対して人命の安全性が確保できなければ、凶器のなにものでありません。素材としての強度の表示が木材は、かなり曖昧でした。特に強度基準が「建築基準法」などで明記されていますが、屋外での木材使用には触れていません。そこで宮崎県では、独自に宮崎県産杉材の機械等級区分E50と定め(ヤング係数E50)設計をしています。このことにより断面積や支点間距離(スパン)が明確に定められるようになり、強度不足によるクレームも無くなりました。近頃では、木材メーカーも独自にヤング係数を部材ごとに表示し設計しやすいようになっています。
[掟3] 木材に対しての使用性  割愛
木材の使用性の優秀性は、多くの書物や記事に掲載されており、このガイドブックでは、あえて触れません。
 
4.屋外専用木製手摺を使用するための基本12
(ここだけは譲れないポイント12)
施工上のポイント
この条件で国産杉材を使ってほしい
屋外では、雨が直接当たる場所(露天)であれば、木材に必ず化学処理を施すこと。
 
施工に当たって常に腐りにくくできるか。どうすれば、木材は腐れないかを検討しておくこと。 
                               
 
基本12
水分を与えない(水分供給される構造にしない)
乾燥できるようにしておく(通風をよく)
乾燥材を使用する(グリーン材を使わない)
土に木材を直接つけない
原則、木口にはカバーをつける
雨に直接うたれないようにする。 濡れてもすぐ乾くように勾配をつける
表面に傷をつけない(釘穴、ビス穴)
横使いをしない
近くに廃材や腐菌の養分を置かない
直射日光をあてない工夫をする
 割れを少なくする工夫をする
木材の芯部、特に髄と呼ばれる部分を露出しない
 
5.屋外専用木製手摺の可能性
(屋外専用木製手摺に賭ける想い)
 
最後まで読んでいただいたあなたに
この屋外専用木製手摺ガイドブックは私とあなたを結ぶ唯一の架け橋です。
 この資料ガイドブックを読んでいかがでしたか。この屋外専用木製手摺ガイドブックの資料は、棒屋が木材を通して学んだことをコツコツ集めたものです。多くの人に読んでいただきもっと多くの方と「木」を通して関わりになれればいいなあと感じて作ったものです。いろいろな疑問や質問、ご意見を直接、棒屋にメールをいただければ、すぐのお答えします。棒屋の新しい木の仲間を見つけるための貴重なアイテムなってほしいです。このガイドブックをあなたの手元に末永く置いていただき、ぜひ、「木」を使ったすばらしい屋外専用木製手摺を作ってください。
棒屋は、杉木材とともに、一番過酷な条件で戦っているあなたと一緒になって考えたいと思っています。まだまだ解決しなければならない問題が山積しています。しかし、「杉は、日本の財産です」大切に使うことで未来の子どもたちにためになると信じています。
 
 

 

                                      

 プロフィール
  
海野洋光/うみのひろみつ 昭和38年4月21日生 宮崎県日向市生まれ
昭和61年 日本大学卒 (F.Lライト研究室 谷川正己教授)
昭和61年から63年 青年海外協力隊員としてザンビア工科大学 建設学部 専任講師 
昭和63年から平成7年 修行として大阪の工務店を経て
平成7年10月 海野建設有限会社入社
平成18年4月 宮崎ミロク協同組合設立
現在 海野建設株式会社 代表取締役
宮崎ミロク協同組合 代表理事
屋外専用木製手摺販売店 棒屋 店主
鳥居専門店 店主 
日本全国杉ダラケ倶楽部 宮崎支部 支部長 会員NO.3
 
「屋外専用木製手摺を普及させるべく、全国を駆け回っています。いつでもお声をかけてください」
 
info@miyazakikensanzai.com